
・単純なイナゴ投資ではなく、自分で考えて株式投資したい
・テクニカル分析が中心だったが、ファンダメンタル分析をやりたい
・決算書から優良企業を発見できるようになりたい
このような方に、ファンダメンタル分析の一例を解説する記事です。「私がストックビジネスに投資する際の分析過程」なので、ファンダメンタル分析の一般論ではありませんが、部分的にでも参考になればと思います。
私の投資手法の特徴
最初に私の投資手法の特徴をまとめます。
→比較的、将来性を見通しやすいから。
・暴落時に投資して基本的に永久保有
→平時、業績堅調なストックビジネスは割高だから。
・利益の成長率は5-15%程度で満足する
→高成長銘柄は成長ペースが鈍化したときのPER低下が怖いから。
メリット/デメリット
利益成長率5-15%程度のストックビジネスに投資することのメリット/デメリットをまとめます。
【要約】初心者でも取り組みやすい、リスクを抑えた手法ですが、高値掴みした際は自身でリスクを生み出すことになります。
・基本、増収増益が継続するので、適正株価で投資すれば、長期的に株価上昇・増配が見込める。
・業績の安定感が株価の安定につながるので、精神的に安定する。(長期投資する上では重要!)
・年4回の決算をフォローして業績の堅調さを確認し、年1回のあらゆる銘柄が売られる「○○ショック」で投資すれば良いので、それ以外は投資に時間を使う必要がない。
・企業分析に慣れていなくても、(会員数など)ストック指標の堅調さを確認すれば「この企業は大丈夫っぽい」と判断できる。
・他の投資家もストックビジネスを魅力的と考え、基本的に割高なので、高値掴みしやすい。
・平時は暴落を待つのみで、現金が多くなりがちなので、機会損失を受け入れる必要がある。
・ストックビジネスとしてのビジネスモデルが崩れた際、株価も急落するリスクがある。
→「ストック指標が伸びなくなったら、即撤退」の判断が必要。
・株価が安定している反面、短期的に資産を増やすことは望みにくい。
【例(8771)イー・ギャランティ】優良なストックビジネスを分析
ここから、具体的な銘柄分析の進め方をイー・ギャランティを例として紹介していきます。
基本的な考え方は「過去、一定の収益性/安定性を保ったまま成長してきており、かつ今の状態から、収益性/安定性が将来的にも継続される」のが優良株だと考えます。
STEP①定量分析(過去の収益性)
以下4つの指標を用います。
売上高粗利益率
【計算】売上総利益/売上高
売上総利益=売上高ー売上原価
【意味】簡単にいうと、売上総利益は原価に対する「付加価値」なので、売上高粗利益率は「どれくらいの付加価値を生み出しているか」の指標。
【基準】◎=40%/〇=20%
【例】イー・ギャランティ2020.3期→80%
売上高営業利益率
【計算】営業利益/売上高
営業利益=売上総利益ー販売費及び一般管理費
【意味】売上高営業益率は「どれくらい本業で利益を生み出しているか」の指標。
【基準】◎=20%/〇=10%
【例】イー・ギャランティ2020.3期→46%
売上高当期純利益率
【計算】当期純利益/売上高
当期純利益=営業利益ー(営業外損益ー特別損益ー法人税等)
【意味】売上高当期純利益率は「最終的にどれくらいの利益が残ったか」の指標。
【基準】◎=10%/〇=5%
【例】イー・ギャランティ2020.3期→39%
ROA(営業利益ベース)
【計算】営業利益/総資本
【意味】ROAは「経営資本を使って、どれだけ本業で利益を生み出したか」の指標。
【基準】◎=10%/〇=5%
【例】イー・ギャランティ2020.3期→18%
※(補足)返済年数
【計算】長期借入金/当期純利益
【意味】「借入金を何年分の利益で返済できるか」の指標。
【基準】◎=1年以下/〇=3年以下(年数は目安。実際は長期化傾向か?を見る)
【例】イー・ギャランティ2020.3期→0年(長期借入金=0)
STEP②定量分析(将来の収益性)
以下2つの指標を用います。
FCF(フリーキャッシュフロー)
【計算】営業CFー投資負担
※投資負担=有形固定資産/無形固定資産/子会社or関係会社株式の取得・売却
【意味】
・収益性を維持するための投資が必要か、が分かる
・営業CF=本業で稼いだキャッシュ
・FCF=本業継続に必要な投資後に残ったキャッシュ
・FCFが安定的に確保できていると、①事業継続に投資負担が少ない儲かるビジネス②増配余力がある、と考えられる。
【基準】◎=安定してプラス/〇=大体プラス
【例】イー・ギャランティ2020.3期→安定してプラス
会計発生高
【計算】〔当期純利益ー(特別利益ー特別損失)〕ー営業CF
【意味】
・表面的な収益性は本物なのかをチェックする指標
・当期純利益から、キャッシュIN・OUTを伴わない特別損益(減損損失など)の影響を排除したものと、実際に本業を通じて手元に入る現金である営業CFのどちらが大きいか。
→営業CFが大きく、「会計発生高がマイナス」の状態が良い。
※当期純利益は「会計上の利益」で「手元に残る現金」ではない。
★売上債権が増加した際の影響→会計発生高はプラス
<CF>営業CFはマイナス 売上債権の増減額(△は増加) △100
<会計>売上高が計上され、コストを差し引いて当期純利益はプラス
①売上債権は「現金回収していないけど、売上高を計上している状態」→顧客が逃げたりすると売上債権を現金回収できない可能性がある。
②その会社自身が粉飾(売上債権/売上高のタイプ)をすると、裏付けのない売上債権が計上される。売上債権の異様な増加は危険。
【基準】◎=安定してマイナス/〇=大体マイナス
【例】イー・ギャランティ2020.3期→大体マイナス
理由)法人税等が当期に小(当期純利益)、前期に大(CF)
なのが、会計発生高にプラス作用したから。
ROA
【意味】
例えば、売上債権/売上高のタイプの粉飾をすると、裏付けのない売上債権が計上される。
→その売上債権は永久に回収されず、BS(貸借対照表)に残り続ける。
→だんだん売上債権が膨張し、指標としては「売上債権回転率」が悪化する。
【計算】
売上債権回転率=売上高/売上債権
【基準】◎=ROA上昇/〇=維持/△=低下だが粉飾の兆しなし/×=粉飾の可能性あり
【例】イー・ギャランティ2020.3期→上昇
STEP③定性分析
以下3つの観点で考えます。
市場の成長性が説明できるか
(イー・ギャランティの場合)
売上債権の市場規模は200兆円。まだ日本では普及していないが、欧米では一般的に普及しているので、「タイムマシン経営」となり得る。
競争優位性が説明できるか
(イー・ギャランティの場合)
保険会社やメガバンクの同じような機能のサービスには、商品力で圧倒的に勝っています。
一方、(3031)ラクーンホールディングスや(3769)GMOペイメントゲートウェイの保証残高が増え、情報精度に先行優位性が無くなり価格競争が激化すると、今ほどの高収益性は確保できない可能性はあります。
当面は、ともに市場を拡大していけば良いという判断です。
→小口ニーズに対応不可
→しかし、リスク引受はメガバンク子会社単体なので保証料率たかい。(一律6%)
また、リスク高いため帝国データバンク43点以下は引き受け不可。
→特にニーズがある低リスク領域に対応不可なのが致命的。保証限度額もネック。
・2010.10 トラスト&グロース設立
・再移転先=2
・売掛保証残高=18,029M(2020.4期)
・保証料率=0.2%~
・EC事業全体流通額=12,808M
→保証残高・再移転先の少なさから、保証料率高い
・2018.5 サービス開始
・再移転先=??
・保証残高=??(2020.9期)
・保証料率=0.5%~
・決済処理金額=5兆8,000億円
→後発ながら、決済処理金額が大きいので情報精度が急速に高まるので脅威。
・再移転先=10以上
・保証残高=439,100M(2020.3期)
・保証料率=0.1%~
その会社の成長サイクルが説明できるか
(イー・ギャランティの場合)
このように、定量面、定性面からイー・ギャランティの分析をしてきました。
まとめ(イー・ギャランティ)
指標 | 基準◎ | 基準〇 | 当社 | 評価 |
売上高粗利益率 | 40% | 20% | 80% | ◎ |
売上高営業利益率 | 20% | 10% | 46% | ◎ |
売上高当期純利益率 | 10% | 5% | 39% | ◎ |
ROA(営業利益ベース) | 10% | 5% | 18% | ◎ |
切り口 | 基準◎ | 基準〇 | 当社 | 評価 |
FCF(フリーキャッシュフロー) | 安定してプラス | 大体プラス | 安定してプラス | ◎ |
会計発生高 | 安定してマイナス | 大体マイナス | 大体マイナス | 〇 |
ROA | 上昇 | 維持 | 上昇 | ◎ |
切り口 | 判断 |
市場の成長性が説明できるか | できる |
競争優位性が説明できるか | できる(競合は注視の必要あり) |
その会社の成長サイクルが説明できるか | できる |
上記の通り、イー・ギャランティが優良な株であることは分かりましたが、投資するには割安度の視点も必要なので、ご興味ありましたら以下の記事をご参照ください。
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