【売買の基準】理論株価の計算方法

投資手法

・投資するときも売却するときも雰囲気で判断している
・株価の割安/割高の判断ができない

・DCF(Discount Cash Flow)法がしっくりこない

このような方に、理論株価計算過程の一例を解説する記事です。投資するとき/売却するときの価値基準として理論株価を使用することで、メンタルに左右されない取引が可能になります。

理論株価計算の流れ

簡単にいうと、将来のEPSと妥当なPERを仮定し、最終的にEPS×PERで理論株価を求めるやり方です。
私の理論株価計算の流れ
STEP⓪優良なストックビジネスを対象とする
STEP①売上高成長率を仮定する
STEP②変動費と固定費を概算する
STEP③コストの先行きを予想する
STEP④5年後の利益を計算する
STEP⑤妥当なPERを検討する
STEP⑥5年後の理論株価を計算する
STEP⑦期待リターンを計算する

STEP⓪優良なストックビジネスを対象とする

今回はこちらの記事で取り上げた(8771)イー・ギャランティの理論株価を求めます。


STEP①売上高成長率を仮定する

「過去の成長率が継続する根拠」があれば、将来の売上高成長率を妥当な範囲で仮定することができます。売上高が積み上がっていくストックビジネスの場合、「成長余地がありストックKPIが順調に増えている」なら過去の成長率が継続すると考えています。
データが見つかれば、市場の成長率も参考にします。(今回はナシ)

【例:(8771)イー・ギャランティ】(2020.3期)
成長余地売上債権200兆円のうち40兆円程度【現状】4,391億円
ストックKPI成長率保証残高【現状】+16%(10年成長率)
【補足】
コロナ禍で信用保証のニーズが高まっているので、5年後までの成長率は以下のように考えました。
2021.3:8~25%(参考:リーマン期5年の平均成長率=13%)
2022.3:8~13%
2023.3:8~10%
2024.3:8~10%
2025.3:8~10%

STEP②変動費と固定費を概算する

有価証券報告書からできるだけ費用科目を拾い、変動費と固定費に分類します。

<場所候補①>(非連結企業に多い)

第5【経理の状況】>1 【財務諸表等】>(1)【財務諸表】
>②【損益計算書】に費用の詳細内訳が記載されている
↓【例:(9795)ステップ】(2020.9期)

<場所候補②>(連結企業に多い)

第5【経理の状況】>1 【連結財務諸表等】>(1) 【連結財務諸表】>【注記事項】
>(連結損益計算書関係)に費用の詳細内訳が記載されている
↓【例:(8771)イー・ギャランティ】(2020.3期)

<場所候補③>(場所候補②で情報が少ないとき)

連結の数値を拾うことは諦め、単独部分の数字を使用します。連結と単独の乖離が小さければ問題ないです。

第5【経理の状況】>2 【財務諸表等】>(1) 【財務諸表】
>②【損益計算書】に売上原価の詳細内訳が記載されている
↓【例:(8771)イー・ギャランティ】(2020.3期)

第5【経理の状況】>2 【財務諸表等】>(1) 【財務諸表】>【注記事項】
>(損益計算書関係)に販売費及び一般管理費の詳細内訳が記載されている
↓【例:(8771)イー・ギャランティ】(2020.3期)

変動費と固定費に分類する

【例:(8771)イー・ギャランティ】(2020.3期、単独)
<場所候補③>を採用すると以下のようになります。

【変動費】1,670M
支払保証料(売上原価)1,287M
支払手数料(売上原価)383M
→売上高6,100Mなので変動費率27.4%
【固定費】2,079M
売上原価+販売費及び一般管理費ー変動費

=1,746+2,003ー1,670=2,079M
【連結決算の業績に合わせるための修正】
売上原価+販管費販売費及び一般管理費:3,238M(単体3,749M)
変動費:1,442M※(単体1,670M)
固定費:1,796M※(単体2,079M)※単体の変動費・固定費を連結に比例按分
変動費率:24.2%(単体27.4%)
売上高:5,956M(単体6,100M)
営業利益:2,718M(単体2,351M)
EPS:42.3

STEP③コストの先行きを予想する

【例:(8771)イー・ギャランティ】

【変動費率】(連結)
2021.3Q3時点で売上原価/売上高=25%なので、すでにリスク再移転コストは落ち着いたと判断し以下のように予想します。
2021.3:19~29%
2022.3:22~32%
2023.3:22~32%
2024.3:22~32%
2025.3:22~32%
【固定費】
過去の人件費推移より以下のように予想します。
2020.3:1,796M
そこに人員拡充に係る人件費増加(毎年10~20人増加)
→固定費40~80M/年増加

STEP④5年後の利益を計算する

【例:(8771)イー・ギャランティ】

 【前提条件】(ここまでの整理)
・STEP①売上高成長率
2020.3:5,956M(連結)
2021.3:8~25%(参考:リーマン期の成長率)
2022.3:8~13%
2023.3:8~10%
2024.3:8~10%
2025.3:8~10%
・STEP③コストの先行き
変動費率
2025.3:22~32%(連結)
固定費
2020.3:1,796M
2025.3:1,996~2,196M(連結)
営業利益
2025.3:5,093~5,418M
簡略化し、営業利益の増加と比例してEPSが増加すると考えます。
2020.3EPS 42.3(営業利益2,718M)
2025.3EPS 79.3~84.3(営業利益5,093~5,418M)

STEP⑤妥当なPERを検討する

以下グラフの見方
・株価:2007.12=1
・EPS:2007.12=1
・PER:2021.3のPER=2021.3株価/2021.3予想EPS
【例:(8771)イー・ギャランティ】
過去平均PERは21倍となり、これを妥当な水準と考えます。

STEP⑥5年後の株価を計算する

STEP④5年後利益→2025.3EPS 79.3~84.3
STEP⑤妥当なPER→21

5年後株価:1,637~1,787円

STEP⑦期待リターンを計算する

2021年4月18日終値2,053円を基準とすると、
・(1,787/2,053)^(1/5)-1=-2.2%
・(1,637/2,053)^(1/5)-1=-3.7%
※「^(1/5)」は年率何%成長かを求める計算です。

まとめ(イー・ギャランティ)

結局上記の計算の場合、現在の株価2,053円で投資すると、5年後の理論株価は1,637~1,787円になり、年率の期待リターンでは-3.7~-2.2%になることが導かれました。
しかし、売上高成長率をもっと高めに設定したり、コスト構造を再検討することで、違った結論になります。
ここの「微妙な調整」は、仮説検証を繰り返す中で少しずつ精度を高めていく必要があります。

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