【決算分析】イー・ギャランティ2021.3期

イー・ギャランティ

基本情報

企業の売掛債権保証で成長。リスクは再保証先に移転。地銀との業務提携積極化。伊藤忠系(ヤフーファイナンス)

仮説検証

イー・ギャランティの2021.3期決算発表を踏まえ、仮説検証する。

【仮説】(2020.3期時点)

前提:保証残高の堅調増加による業績拡大
2021.3期予想営業利益レンジ 3,374 ~ 3,410M

【検証】(2021.3期時点)

2021.3期営業利益(実績) 3,088 M
予想中央値からの乖離率 -9%

≪下方乖離の理由≫ 
①売上高はKPI堅調増加の結果、20.8%増収→〇 (予想:+8~25%)
②粗利率(≒変動費率)は低下(80%→75%)→〇 (予想:+71~81%)
③販売管理費は2,029M→2,289M(+260M)→× (予想:+40~80M)
→人件費(給料+賞与引当金繰入)の増加は+86Mと想定内も租税公課+65M他が誤算。

≪指標≫

 2020.3期2021.3期 増減率
保証残高(億円)4,3916,371※

※2021.3期より、保証残高は保証対象先毎に設定している保証枠(保証対象先が特定できない場合は、契約先毎に設定している保証枠)の合計を記載
→2020.3期と単純比較できない。

決算概要

【BS】貸借対照表

 

規模
4,348M→22,570Mと、12年前比5.2倍。
資産
・現預金割合が増加(56→71%)。
負債・純資産
・ストックオプション行使や当期純利益により純資産増加し、自己資本比率は上昇。

【PL】損益計算書

収入
・保証残高の堅調増加と保証料率上昇により売上高は12年前比2.7倍になった。
支出
・売上原価は1.4倍強。販管費は2.5倍強。利益率は大幅上昇。
・給与は2.4倍(正社員+平均臨時雇用人員:80人→161人で2.0倍)

【CF】キャッシュフロー計算書

(比較対象)

イン 税引前当期純利益、前受金がメイン。直近はストックオプション行使あり。
アウト 法人税等、配当金が多くを占める。直近はESOP効果で法人税等減少。

定量分析①(過去の収益性)

収益力は高水準だが少し低下。理由は再保証料増加だが、一方で大きく増収しており、セットで想定通りなので問題なし。

定量分析②(将来の収益性)

FCF(フリーキャッシュフロー)

 
以下要因で営業CFが押し上げられている。投資負担は引き続きなし。
 2020.32021.3割合
営業CF1,036M4,964M3,928M100%
①税引前当期純利益2,617M3,079M462M12%
②預り金-1,890M7M1,897M48%
③法人税等-826M29M855M22%
④前受金411M605M194M5%
①純粋な業績の拡大→来期も同様に増加見込み
②2019-20の預り金減少の影響がなくなった→来期は関係なし
③2019-20のESOP関係の法人税等減少の影響がなくなった→来期はキャッシュアウトが正常に戻る
④保証契約先から受取る保証料に係るもの→来期も同様に増加見込み

会計発生高


大きくマイナスになっているが、法人税のギャップ(前期【CF】<当期【会計】)による一過性のもので、来期はその分平常時に戻るはず。

ROA

 
ROAは低下。
現預金増加で総資産回転率が低下していることが原因なので問題なし
一時的要因ながら大幅増加した営業CF・いつも通り小幅の投資CF・ストックオプション行使で大幅プラスの財務CF

定性分析

市場の成長性が説明できるか

・売上債権の市場規模は200兆円。まだ日本では普及していないが、欧米では一般的に普及しているので、「タイムマシン経営」となり得る。

競争優位性が説明できるか

保険会社やメガバンクの同じような機能のサービスには、商品力で圧倒的に勝っています。
一方、(3031)ラクーンホールディングスや(3769)GMOペイメントゲートウェイの保証残高が増え、情報精度に先行優位性が無くなり価格競争が激化すると、今ほどの高収益性は確保できない可能性はあります。
当面は、ともに市場を拡大していけば良いという判断です。

競合①保険会社の「取引信用保険」
「加入者は保険業法に基づき、取引先全てと包括的な契約を結ぶ必要がある」というデメリットがある。
→小口ニーズに対応不可
 
競合②メガバンクの「ファクタリング」
一社から保証をかけることが可能。例えば愛知県はUFJのファクタリングがトップシェア。
→しかし、リスク引受はメガバンク子会社単体なので保証料率たかい。(一律6%)
また、リスク高いため帝国データバンク43点以下は引き受け不可。
→特にニーズがある低リスク領域に対応不可なのが致命的。保証限度額もネック。
 
競合③一般の事業会社(決済代行)
(3031)ラクーンホールディングス
・「T&G売掛保証」「URIHO」
・2010.10 トラスト&グロース設立
・再移転先=2
・売掛保証残高=23,076M(2021.4期)
・保証料率=0.2%~
・EC事業全体流通額=19,853M(2021.4期)
→保証残高・再移転先の少なさから、保証料率高い
・「GMO BtoB売掛保証」
・2018.5 サービス開始
・再移転先=??
・保証残高=??(2020.9期)
・保証料率=0.5%~
・決済処理金額=5兆8,000億円
→後発ながら、決済処理金額が大きいので情報精度が急速に高まるので脅威。
・2000.9 設立
・再移転先=10以上
・保証残高=637,100M(2021.3期)
・保証料率=0.1%~

その会社の成長サイクルが説明できるか

まとめ

最後に、それぞれの分析結果についてまとめます。 以下の通り、一時的に傷ついた優良な株であることは分かりましたが、投資するには割安度の視点も必要なので改めて別記事で考え方をまとめます。
STEP①定量分析(過去の収益性)
指標基準◎基準〇当社評価
売上高総利益率40%20%75%
売上高営業利益率20%10%43%
売上高当期純利益率10%5%28%
ROA(営業利益ベース)10%5%14%
STEP②定量分析(将来の収益性)
切り口基準◎基準〇当社評価
FCF(フリーキャッシュフロー)安定してプラス大体プラス安定してプラス
会計発生高安定してマイナス大体マイナス大体マイナス
ROA上昇維持低下
STEP③定性分析
切り口判断
市場の成長性が説明できるかできる
競争優位性が説明できるかできる
その会社の成長サイクルが説明できるかできる

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