【決算分析】スター・マイカ・ホールディングス2020.11期

スター・マイカ・ホールディングス

仮説検証

スター・マイカ・ホールディングスの2020.11期決算発表を踏まえ、仮説検証する。

「スター・マイカ・ホールディングス仮説構築-2024.11」参照

以下の定量分析の各指標についてはこちらを参照ください。

スクリーニング

<概要>
中古区分所有マンションへ投資し賃貸、退去後に改装し売却の独自事業。19年6月持株会社移行(ヤフーファイナンス)

1.スクリーニング(191216更新)の基準を確認する。
⑴中小型株:時価総額1,000億円以下→〇
⑵理解の及ぶ業界(ITや医薬品等を除くという意味)→〇
⑶10年間、営業利益、経常利益、当期純利益が黒字(また90%以上の減益も除外)→〇
⑷4つの指標(粗利、営利、当利、ROA)について、各年で全て1点以上を「クリア」とすると、「クリアした年が10年間で8年以上」かつ、「非クリアの指標が存在する年が2年連続しない」企業を、「監視銘柄」とする。→×(以下参照)

スター・マイカ・ホールディングスの場合は




以上、収益力は、コロナ禍で販売価格を弾力化したため、2期連続で監視基準を満たさずリーマン期並み。
リノベマンション事業の前期比売上高:
・+1.1%(リーマン期2009.11)→残高は-2,029M:仕入も販売も少ない。
・+34.6%(コロナ禍2020.11)→残高は-2,436M:仕入も販売も多い。
→手元資金確保や自己資本比率回復のために販売を急ぎ利益率低下。

投資妙味

(1)PER×PBR
(2)PEGレシオ
(3)時価総額

基準は以下の通り。

スターマイカHDの場合は、

以上、右列に着目すると10点満点中、10点となっており、
投資妙味味あり。

定量分析①

<目的:財務3表を要約→3表の構造、主要科目と、それらの変化をつかむ>

やること:各企業の財務3表で、主要部分(80%が目安)をグラフにする。

⑴BSの要約



規模 25,143M→76,758Mと、11年前比3.1倍。
内訳 資産
・販売用不動産が最も多いが、直近は現預金へ少しシフト。
・有形固定資産は賃貸用不動産売却済。コロナで再開延期か。
負債・純資産
・借入金は増加してきたのが前期並みになった、自己資本比率は少し回復。

⑵PLの要約



収入 ・販売用不動産積上げに伴い、売上高は11年前比3.0倍になった。(直近はストック減少)
支出 ・売上原価は+3.0倍。一方販管費は+3.1倍で、利益率は低下。
・給料・手当は3.7倍(正社員+平均臨時雇用人員:40人→182人で4.6倍。※2020.11期は連結)
・販売用不動産+有形固定資産は前期比△4%だが、回転率上昇のため、租税公課(固定資産税、不動産所得税)は前期比+16%。

⑶-1CFの要約







残高 一進一退。
イン 当期純利益に加え、不況期→販売用不動産売却・長期借入金(少)。非不況期→長期借入金(多)
アウト 法人税、配当金に加え、不況期→短期借入金。非不況期→販売用不動産仕入

参考

⑶-2営業CFと投資のバランス



当期はコロナ禍対応。賃貸用不動産取得がないため投資負担なく、販売用不動産純減のため営業CFはプラス。普段、営業CFはマイナス。

『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術 』の「消費者独占企業を見分ける8つの基準」の基準5と6に対応している。

定量分析②

<目的:財務3表をそれぞれ関連させ利益の質を分析する>
+α:投資効果、債券と捉えた場合の考察

やること:各企業の財務3表で、以下の指標を時系列グラフにする。

⑴CF→PL
一つ前の記事でCFを見たので、PLもそれに見合うものかを確認する。



当期は販売用不動産純減のため、会計発生高はマイナス。
=会計上の利益が会計操作されている可能性は少ない。
※会計発生高=当期純利益+特別損失ー特別利益ー営業CF

⑵PL→BS
⑴まででCF、PLと見てきたのでBSに歪みが生まれていないかチェックする。
まず、PLとBSの組み合わせであるROA単体の推移を分析する。



ROAは続落。
コロナ禍対応の販売用不動産投げ売りにより、回転率↑・利益率↓
→BSを歪めて(費用を資産として先送りして)利益率を高く見せている可能性は低い。
→⑴と、ROA単体の分析から、当社の利益の質は高いと判断できる。




次に、本業投下投資CFと関連付けて考えると、
・投資規模は総資産比少なく、ROAへのインパクトも小さい。

⑶EPSとROE


『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術 』​によると、バフェットは消費者独占型企業への投資を債券への投資ととらえ、
EPS=債券の利子
ROE=債券の額面に対する利率
と考えている。
その観点で上のグラフを見ると利子・利率とも続落。

PER

過去PERの平均値は以下の通り。
※計算方法
2020.1PER→2020.1月末株価÷2020.3期EPS

投資判断

2020.11期決算から投資判断をする。

安全性

リーマン期まで遡ると以下の通り。






以下、​『最小限の数字でビジネスを見抜く 決算書分析術』(望月実、花房幸範)
の「Case3黒字倒産はなぜ起こるのか アーバンコーポレーション」参照して分析。

【流動比率の注意】以下①~⑪は上画像の①~⑪に対応
①流動比率は一般的な安全ライン(200%)をクリアし、なお高水準なので安全に見える。
②①→総資産に占める流動資産の割合は極めて高く、流動資産の内容に注意する必要あり。
③②→流動資産の中で在庫(販売用不動産)の割合が高く、在庫販売(+賃貸売上)で、④を賄える必要有。→⑪
④①→総資産に占める流動負債の割合は高くないが、流動負債に占める有利子負債の割合は高い。→⑪

【経営の悪化はここに表れる】
⑤自己資本比率は前々期水準まで回復→会社が掲げるレバ上限5倍は下回る(含み益考慮した実質自己資本比率=35%)
⑥総資産に占める有利子負債割合は70%を超過→高水準で安定。
⑦直近は営業CF>当期純利益(←予想通り不況時対応で販売用不動産純減)なので大丈夫。

【CF分析】
⑧販売で稼いだキャッシュ>新たな不動産の取得→営業CFプラス。
⑨⑧→営業CFプラス・長期借入金を新しい長期借入金で返済→⑪より、今のところ資金繰り問題なし

【不動産ビジネスが抱えるリスク】
⑩(1)資産の大部分が販売用不動産であるため、高値でつかんだ不動産が値下がりリスク。
→オーナーチェンジ物件(15%と仮定)は取得時に含み益あるも、現空物件は上記リスクあり。
→仮に現空物件価格が20%下がると、66,541M×15%×20%=1,996Mの損失となり、純資産19,713Mの10%相当。
→リーマン時は2009.11の販売用不動産評価損124M(売上原価)+179M(特別損失)
           2010.11の販売用不動産評価損107M(売上原価)+0M(特別損失なし)
→コロナ禍:2020.11の販売用不動産評価損504M(売上原価)+0M(特別損失なし)
⑪(2)金融収縮による資金繰り悪化リスク。
→有利子負債のうち、7,612Mは1年以内に返済する必要がある。=③
→新規資金調達ができなくなると、損覚悟で販売用不動産を売却せざるを得なくなる。
→リーマン時は販売用不動産の取得をストップすることで対応。需要は堅調で、資金繰りは大丈夫だった。→③OK
→コロナ禍:リーマン期よりは不動産取得を抑制せず。(短期の有利子負債はリーマン直前の7,244Mより少額なので④も大丈夫)

【結論】リーマン期と比較し現空物件取扱の点が異なるが、事業継続には問題なし。

ぜひ、ご意見・ご感想お寄せください

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